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酒場の外で、人は集まりはじめている――世界で伸びる三つの新しいスポーツ

6 分前
読了時間: 5分

若い人が酒を飲まなくなった、という話はよく聞きます。


でも彼らは、人と会うのをやめたわけではありません。


集まる理由が、増えただけです。

夜の街が縮み、別の場所が育っている

欧米では、ナイトライフの売上が落ちる一方で、運動を軸にした社交の場が伸びています。


象徴的なのがランクラブです。朝六時にカフェの駐車場へ集まり、数キロ走って、そのあとコーヒーを飲む。それだけの集まりが、いま「新しい出会いの場」と呼ばれています。


英国のZ世代426人を対象にした2024年の調査では、ランクラブに参加したい理由として「新しい人に出会う」を挙げた人が72%で、「ランニングの上達」の61%を上回りました。運動そのものより、人と会うことが動機になっている。


「ソフトクラビング」という言葉も生まれています。深夜のクラブではなく、朝や昼のカフェでDJの音楽とダンスを楽しむ、酒を中心としない社交の形です。


そしていま、世界で特に伸びている競技が三つあります。

ピックルボール──20代と60代が同じコートに立つ
ピックルボール──20代と60代が同じコートに立つ

テニスコートの三分の一ほどの広さで、パドルと穴の開いたボールを使う競技です。米国スポーツ・フィットネス産業協会の調査によれば、2025年の米国の参加人口は2,430万人に達しました。


日本でも広がり始めています。2026年に公表された民間調査では、国内の競技人口を約33万人と推計しています。まだ普及の初期段階ですが、専用施設が都市部に増え、企業の参入も相次いでいます。


広がっている理由は、競技の設計にあります。


走る距離が短く、パワーより配球の競技なのです。だから20代と60代が同じコートで成立する。コートが小さいぶんプレーヤー同士の距離も近く、プレー中から会話が生まれます。

パデル──試合のあとの時間まで含めて楽しむ
パデル──試合のあとの時間まで含めて楽しむ

四方をガラスの壁に囲まれたコートで行う、テニスとスカッシュを掛け合わせたような競技です。


国際パデル連盟が2026年10月に公表した最新のレポートによれば、過去一年に一度でもプレーした人は世界で約4,000万人。このうち週一回から隔週ほどの頻度で続けている人が2,700万人とされています。プレーされている国と地域は191にのぼります。


日本との関わりも生まれました。今年9月から10月にかけて名古屋で開催されたアジア競技大会で、パデルが正式競技として初めて実施されています。


この競技を語るうえで面白いのは、プレーが終わったあとの時間です。


スペインでは、試合後に飲み物や軽食を囲んで交流する時間を「第三のハーフ」と呼ぶことがあります。ダブルスが基本でコート内の距離が近く、プレー中から会話が弾む。その延長として、コートを離れたあとの社交までが文化に組み込まれています。


なお、そこで飲まれているのはビールやアペリティーボであることも多い。酒をやめた人たちの集まりではありません。

HYROX──制限時間がない
HYROX──制限時間がない

1kmのランニングと八種類のワークアウトを、交互に八回繰り返す。それだけの競技です。


2017年にドイツのハンブルクで始まったとき、参加者は約650人でした。それが2025/26シーズンには、30か国以上・100を超える大会で、140万人超が参加しています。


日本でも大会規模が拡大しています。2025年の横浜が約4,000人、翌年の大阪が約8,100人、今年8月の幕張メッセは約12,000人でした。いずれも大会の参加者数で、競技人口そのものではありませんが、関心の広がりは見て取れます。


この競技で興味深いのは、ルールです。


参加条件は16歳以上であること。それだけで、予選も資格もありません。そして制限時間がありません。 歩いても完走でき、実際に参加者の99%以上がゴールしています。千葉大会には16歳から76歳までが集まりました。


もっとも、制限時間がないことと、楽な競技であることは別です。8kmを走り、重いソリを押し、サンドバッグを担いで進む。相応のトレーニングを前提とした、厳しい競技であることに変わりはありません。

共通しているのは、能力差を吸収する設計

三つの競技は中身がまったく違います。身体的な負荷も、必要な費用も、始めやすさも同じではありません。


それでも共通している点があります。


広く多くの人が、同じ場に参加できる余地を広げていること。


ピックルボールは年齢と体力の差を競技設計で吸収しました。パデルはダブルスと壁によって、技術差があってもラリーが続く構造を作りました。HYROXは制限時間をなくし、順位ではなく完走を目標にできるようにしました。


強い人が勝つことは変わりません。でも、強くない人が居場所を失わない。そこが設計されています。


そして、どの競技にも終わったあとに集まる時間がある。

飲むことが、集まる条件ではなくなってきた

ここで飲み会を思い出してみてください。


乾杯はビールが前提で、飲めない人はウーロン茶を頼み、「飲まないの?」と聞かれる。同じペースで飲めないと話に入りづらい。割り勘になれば、飲まない人のほうが払いすぎることもある。


飲むことが参加の条件になっている場所でした。


いま伸びている社交は、そうではありません。集まる理由がまず別にあって、飲み物はそのあとに来る。走ったから、打ち合ったから、一緒に何かをやり切ったから集まる。酒が苦手でも、その日は飲みたくなくても、その場にいられます。


これは酒が否定されたという話ではありません。集まる理由が多様化したという話です。

だから、飲み物の選択肢も増えていい

集まる理由が増えれば、そこで求められる飲み物も変わります。


ビールを飲みたい人は飲めばいい。運転する人、翌朝に予定がある人、単にその気分ではない人は、別のものを選べばいい。同じテーブルで、違うものを飲む。それで何も困りません。


体を動かしたあとなら、なおさらです。香りや味わいをはっきり感じたいとき、酔わないほうが都合がいいこともあります。


飲むために集まるだけでなく、何かを一緒に楽しんで、そのあとに好きなものを飲む。そんな社交の形が、少しずつ広がっています。


参考資料


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