ノンアルボイス|EDEN CELLAR 吉田 宏樹の場合
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更新日:3 日前
ノンアルコールが盛り上がっている気がする、そんな気がするのだけど、実際どうなの?飲食の現場でノンアルコールを扱っている人に、ノンアルコールとの出会いから現在地点、将来に向けた課題を伺う企画『ノンアルボイス』。
今回は神楽坂の坂の上に、2024年9月にバー好きの楽園EDEN CELLAR/イーデンセラーをオープンした吉田宏樹さんにお話を伺いました。
吉田さんのこれまで

吉田さんとバーの最初の接点は、大学時代に成人式のあとに初めてバーに訪れたときのことでした。
バーという非日常な空間で、かっこよくカクテルを作る、博識なバーテンダー。
気がつけば、バーの世界へ足を踏み入れていました。
バイト先のバーがレストランのウェイティングバーということもあり、カクテルよりもワインに触れることが多かったと語ります。
その年にはワインエキスパートを取得し、卒業後はホテル業界を志します。
2009年、大学を卒業して日系ホテル御三家の一角であるホテルニューオータニに就職。
サラリーマンという立場上、自分の行きたい部署に行けるかはギャンブルなところもありますが、すでに取得していたワインエキスパート資格と、バーテンダーという仕事への熱い思いを武器に1年目からメインバーに配属されます。
とはいえ、メインバー配属がそのままわたしたちが想像するカウンターでシェイカーを振りながらカクテルを作るバーテンダーとなることを意味するわけではありません。
当時、メインバーには14名のスタッフがいたそうですが、カウンターに入ることを許されていたのは3~4名程度。吉田さんは一日も早くカウンターに入れるようにと、カクテルコンペティションへの参加を決めます。
「もちろん、メインバーで何年か働いていれば、いずれは求めるポジションのお鉢が回ってきたでしょう。しかし、早く自分の求めるポジションを勝ち得るには、コンペティションで実績を残して実力を証明する必要がありました。」
有言実行、吉田さんは入社翌年の2010年にはコンペティションで優勝を勝ちとり、その後も様々な受賞歴を手にしていきます。
H.B.A. CLASSIC 創作カクテルコンペティション・チャンピオンシップ2016での優勝、ディアジオワールドクラス2019でのジャパンチャンピオン/世界5位の実績をはじめ、これまで11個のタイトルを獲得しているというから驚きです。
そんな順風満帆に思えるバーテンダー人生を送っていた吉田さんに転機が訪れたのが、コロナ禍でした。
「自分は大きな会社に所属していたので、不安感はなかったのですが、街場で頑張る仲間たちを見ると、みんな明日をも知れぬという中で日一日を必死に生きている。このままではバーテンダーとしてではなく、人として差をつけられてしまう。自分ももっと挑戦的な環境に身を置くしかないと感じました。」
そうして、2022年から具体的な独立準備を進め、2024年9月に自身のお店、EDEN CELLARを創業したそうです。
「創業までの道のりは、共同創業した仲間と袂を分かつことになってしまったり、人手が足りず奥さんにも協力してもらったりと、すべてが順調だったわけではないですが、地元の方々から愛されるお店として日々楽しく営業させていただいています。」
吉田さんとノンアルコール

さて、ではノンアルコールと吉田さんの出会いはどうだったのでしょうか?
最初の就職先がホテルであったことから、ノンアルコールのニーズは当然存在し、その需要に応えることはサービスマンとして当たり前のことだったそうですが、より真面目にノンアルコールに取り組むきっかけになったのは、やはりコロナ禍だったそうです。
「それまでは、シンデレラやサラトガクーラーのような『いわゆる』なモクテルメニューしか置いていませんでした。しかし、コロナ禍に外部シェフを招聘してモクテルペアリングを担当することがあり、ミクソロジストとして有名な南雲主于三さんから色々学ばせていただき、モクテルの可能性を感じることができました。」
EDEN CELLARでは、お酒を飲まない人にも楽しんでいただくため、モクテルメニューをあえてメニューの最初に記載し、お酒を飲まないという選択肢も歓迎していることを打ち出していると語ります。
「今ではだいたいお客さまの1~2割がモクテルメニューを楽しまれます。もともと、EDEN CELLARはホテルのバーのような大き目の店舗設計にしています。飲める人、飲めない人双方が楽しんでもらえる空間を目指しています。」
当然モクテルメニューでも手を抜くことはなく、普通のジュースやソフトドリンクでは味わえない『非日常感』を味わいや香りで表現されているとおっしゃいます。(なんでも吉田さんの奥さんはお酒が飲めないので、良き相談役になってくれているとのこと。)
ノンアルコールの未来について

最後に吉田さんにノンアルコールの未来についてうかがってみました。
「バーにおける、ノンアルコールということでお話をさせていただきますと、」と前を置きのうえ、
「アルコールの入ったカクテルにせよ、アルコールの入っていないモクテルにせよ、日本ではカクテル/モクテルを飲む人口がまだまだ少ないのが実情です。日本でいう居酒屋感覚で使われる海外のバーとは異なり、日本のバーはまだまだ多くの人にとって敷居の高い存在になってしまっているように思います。フランクに日常使いできるバーが増えること、そして軽い気持ちでバーに入ってもいいという認識が広がることが、結果としてバーにおけるノンアルコールを伸ばす鍵だと思っています。」
神楽坂でホッと一息つきたいときに、気楽に立ち寄れるバーEDEN CELLARにみなさんもぜひ伺ってみてください!
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