お酒を飲むと眠れる、は本当か──睡眠とアルコールの科学
- 5月29日
- 読了時間: 3分
「寝る前に一杯飲むとよく眠れる」という感覚を持っている人は少なくありません。
実際、寝酒は日本でも世界でも古くからある習慣です。
でもこれ、半分しか正しくありません。
アルコールは確かに眠りに入りやすくする効果があります。
問題は、その後に何が起きているかです。

前半は本当に眠れる
アルコールは中枢神経を抑制する作用を持ちます。
就寝前に飲むと、この鎮静作用によって寝つきが早くなります。
研究によれば、全用量においてアルコールは睡眠潜時(寝つくまでの時間)を短縮し、夜前半の睡眠を深くまとめる効果があります。
「飲んだらすぐ眠れた」という感覚は、事実です。
後半に何が起きているか
問題は後半戦です。
体がアルコールを代謝し始めると、睡眠への影響が逆転します。
アルコールが代謝される過程で、睡眠と覚醒を調節する神経伝達物質間のコミュニケーションが乱され、特に夜の後半に浅く断片的な睡眠と頻繁な覚醒が生じます。
特に影響を受けるのがレム睡眠です。
27件の研究を対象としたシステマティックレビューとメタ分析によれば、標準2杯程度の低用量からREM睡眠の減少が確認され、アルコールの用量が増えるほど悪化することが示されています。
具体的な数値として、アルコール摂取によりレム睡眠は平均11.3分短縮され、飲む量が増えるほどその影響が大きくなることが報告されています。
「よく眠れた気がするのに、翌朝なんとなく疲れている」という経験がある人は、この現象が起きていた可能性があります。
そもそもレム睡眠とは何か
レム睡眠は、睡眠サイクルの中で特に重要な役割を担う段階です。
レム睡眠は夢を見ることが多い段階で、記憶の整理・感情の処理・身体の回復に関わるとされています。
アルコールによってこの段階が削られると、眠った時間の長さに関わらず、脳と体が十分に回復できない状態になります。「飲んだ翌日は頭が重い」「なんとなく気分が優れない」という感覚は、レム睡眠の不足が一因として考えられます。
習慣化するとさらに問題が深くなる
アルコールを睡眠補助として継続的に使用することは、長期的には逆効果になる可能性があります。飲酒習慣が続くと睡眠の質が低下し続け、さらに睡眠問題がアルコール依存のリスク要因になるという双方向の関係が指摘されています。
寝酒が習慣になっている場合、「飲まないと眠れない」という状態は、睡眠の問題が解決されているのではなく、依存が深まっているサインである可能性があります。
では、寝る前に何を飲むか
寝つきを助けながら睡眠を妨げない飲み物として、ノンアルコール飲料は自然な選択肢になります。
リラックス効果のあるハーブを使ったノンアルコールスピリッツや、発酵由来のやさしい酸味を持つコンブチャなど、夜の時間に合う飲み物の選択肢は広がっています。
「寝る前の一杯」をノンアルコールに変えることは、断酒でも我慢でもありません。睡眠の質を守るための、合理的な選択です。
参考資料




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