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ノンアルボイス|JANU TOKYO 中根 庸介の場合

ノンアルコールが盛り上がっている気がする、そんな気がするのだけど、実際どうなの?飲食の現場でノンアルコールを扱っている人に、ノンアルコールとの出会いから現在地点、将来に向けた課題を伺う企画『ノンアルボイス』。


今回は2024年に開業した『アマン』の姉妹ブランド『ジャヌ』の世界初となるホテル「ジャヌ東京」のバーテンダー中根庸介さんにお話しをうかがいました。


  • 中根さんのこれまで

中根庸介
中根庸介さん(提供ジャヌ東京)

中根さんと飲食の出会いはホテルという空間からスタートします。


進学先で悩んでいた高校生の中根さんは、ホテルで働く親戚の影響でホテルの専門学校への進学を決意します。


最初は「ホテル=宿泊」のイメージだったそうですが、在学中にインターンで現在のハイアットリージェンシーのオールデイダイニングという「飲食」の場で働く機会を得ます。


「たまたま異動してきたバーテンダーの方たちが職場に多く、彼らの働く姿や佇まいを見ているとホテルのバーテンダーという仕事に興味が湧いてきました。」


そのことを専門学校の先生に告げると、当時毎年のように日本一のバーテンダーを輩出していた京王プラザホテルを紹介されます。


勧められるままに無事入社を果たすと、最初の1年間はスカイバーと宿泊部門の二部門で研修が始まります。


「スカイバーにいた頃、先輩バーテンダーたちに絶対にバーテンダーになりたいということを伝えていると、直属の先輩だった岡村朗さんからHBA(日本ホテルバーメンズ協会)の資格を取ることを勧められました。」


通常、バーに本配属になった2年目で受ける試験を1年時にとってしまうことで、人事部に本気度を知ってもらおうという作戦でした。


中根さんにとっての幸運は、研修の後半が宿泊部門だったことだと話します。


「宿泊部では18時に勤務が終わるシフトでしたので、夜の時間をしっかり勉強にあてることができました。それこそ学生時代は勉強嫌いだったので、人生で一番勉強していた時期だったかもしれません(笑)」


努力の甲斐あって、社会人1年目でHBAの資格を取得します。さらに、京王プラザホテルの社内カクテルコンペティションの30歳以下の部でなんと3位を獲得するという快挙をなしとげてしまいます。


入社1年も経たない新人が、30歳以下の先輩たちをごぼう抜きしたとあって、中根さんは次期エースとしての活躍を嘱望されます(しかし、この時中根さんに試練の時が訪れるとは誰も想像していませんでした)。


本配属は当然スカイラウンジでバーテンダーに決まり、カウンターには立てないまでも、バックヤードで夜に向けての仕込みや注文に応えるといった忙しいながらも充実した日々が続きます。


しかし当然毎年のようにカクテルコンペティションにも参加しますが、肝心の結果が残せません。


「最初の社内コンペで想定外の好成績を収めたことで、周囲の期待を感じすぎていたのかもしれません。」


気づけば入社10年が過ぎてようとしていました。思うような結果が残せずフラストレーションがたまっていたそうですが、当時は中根さんだけでなく、京王プラザホテル全体として実績が残せない年が続いたそうです。


「自分がこの雰囲気を打破するしかない」という覚悟で、悲願の優勝を勝ち取ります。


続いて2018年にもレミーコワントロー社が主催するLa Maison Cointreau 2018で日本優勝、アジアパシフィック大会でも総合3位の好成績を残します。


順風満帆のようにも見えましたが、そんな時に社会はコロナ禍に突入します。


「正直コロナがなければ、京王プラザホテルで勤め上げていたと思います。職場環境や仕事にも満足しました。だけど自分は成長できているのか、自分時間の増えたコロナ禍でそう考えるようになりました。」


そうして、転職先の候補に挙がったのが、2024年に開業予定だったジャヌ東京でした。


日系色を濃く残した京王プラザホテルとは異なる、外資らしい若く勢いのある経営層、シグネチャーカクテルの監修に日本を代表するミクソロジスト南雲主于三氏を招く力の入った態勢。成長するには申し分ありません。


「開業1年と少しとはいえ、まだジャヌ東京を知ってくださっている人は多くないと思っています。ですので、自分自身が様々なところで活躍することでジャヌ東京を知ってもらう機会を作っていければ。」とお話しいただきました。


  • 中根さんとノンアルコール

ジャヌバー
ジャヌ バー(提供ジャヌ東京)

実はお酒に強くなく、プライベートだとあまりお酒を飲まないとおっしゃる中根さんですが、本格的にノンアルコールと向き合うようになったのは2018年頃だったそうです。


「2018年頃から日本でもノンアルコールスピリッツなどが出てくるようになって、従来的なモクテルを超えたものを作れるようになりました。」


さらにジャヌ東京への入社が決まり、多くのものを学ぶことができたと語ります。


ノンアルコールにない厚みやボリュームをいかに出すか、そしてどのように複雑さを表現するか、といった味わい面は言うまでもなく、背後のストーリーやビジュアルにも重きを置きモクテルを制作しているそうです。


東京の街をテーマにしたジャヌ東京のシグネチャーモクテルについて伺ってみると、明治神宮から着想を得て、境内の自然や光をイメージして檜やベルガモット、果物をつかった『Beyond 常夜』、麻布台ヒルズのコンセプトである「グリーン&ウェルネス」をモチーフにし、不老長寿の薬といわれていたクコの実やアッサムティーをあしらった『麻布台/Well-Scent ウェルセント』、といった確かにコンセプトにもこだわったモクテルが並びます。


  • ノンアルコールの未来について

ジャヌバーモクテル
Beyond 常夜(左)、麻布台/Well-Scent ウェルセント(右)(提供ジャヌ東京)

最後に中根さんにノンアルコールの未来についてうかがってみました。


「ジャヌ東京に来られるお客さまもそうですが、今の若い方たちはお酒を飲まない/飲めないことに全くネガティブな感情を持っておられません。


そのような背景がある以上、ノンアルコールの市場はまだまだ伸びていくと思います。


そして、それに伴ってバーという空間も変わりつつありますし、変わっていく必要があると思っております。」


世界に先駆けてたちあがったジャヌ東京に是非一度足を運んでください。



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