ノンアルボイス|夜香木 上口 健斗の場合
- info1266788
- 7月6日
- 読了時間: 5分
更新日:6 日前
ノンアルコールが盛り上がっている気がする、そんな気がするのだけど、実際どうなの?飲食の現場でノンアルコールを扱っている人に、ノンアルコールとの出会いから現在地点、将来に向けた課題を伺う企画『ノンアルボイス』。
今回は熊本にありながら2024年、2025年と連続でASIA'S 50 BEST BARSに選出された「夜香木」の若手バーテンダーにして、2024年ディアジアワールドクラスのファイナリストの上口健斗さんにお話をうかがいました。
上口さんのこれまで

「子ども時代に家族旅行をしていた頃から、ホテルにはそこはかとない憧れがありました。」
将来を考えたときに、お父さまの仕事でもある消防士としての道に進むか、昔の憧憬を思い起こしてホテルで働くか。
上口さんが選んだのは後者でした。
入社したのは、地元岐阜の高山グリーンホテル。最初の4年間はビュッフェレストランでドリンクを担当します。
ドリンク担当といっても、ビュッフェレストランということもあり、複雑なことはあまりなかったそうです。それよりも広いレストランを縦横無尽に動き回り、時間との勝負といった仕事内容だったと語ります。
もっとも、体力の有り余っていた高校卒業したての上口さんには合っていたそうで、楽しい職場だったとも仰っておりました。
しかし、ドリンクと向き合っていると少しずつドリンクの深い世界にも興味が湧いてきます。そんな時に異動になった部署がホテルのバーでした。
ホテルのバーではバーテンダーが多くなかったこともあり、異動早々にカウンターに立つようになります。
「先輩バーテンダーがいたので、すぐにカクテルを作らせてもらえることはなかったですが、一日も早く先輩を追い越そうという気持ちは常にありました。」
向上心を体現したように、カクテルブックなどの文献を漁りながら学びを深めていきます。
「天は自ら助くる者を助く」とはよく言ったもので、ちょうどその頃に高山グリーンホテルが京王プラザホテルと資金提携を結んだことで、京王プラザホテルの有名バーテンダーが研修講師としてやってきます。
その時に講師として派遣されたのが、レミーコアントロー社が主催するLa Maison Cointreau 2018で日本優勝を果たしたばかりの中根庸介さんでした。
「技術や知識は言わずもがなですが、バーテンダー然とした佇まいに憧れました。憧れすぎて、髪型とか真似していました(笑)」
上口さんのバーテンダーとしての視座が上がった大事なタイミングでした。
さらに、タイミングは重なります。ほどなくして、世界はコロナ禍に突入。そこで出会ったのがカクテルコンペティションというものでした。
YouTubeの配信で流れてきたのは、2021年ディアジオワールドクラス。夜香木の木場進哉さんが日本チャンピオンになった年でした。
「そもそもカクテルコンペティションみたいなものもよく知らなかったですが、あまりにも鮮烈にうつり、夜香木の求人に応募していました。」
岐阜から急転熊本に行くことに、不安がなかったわけではないそうですが、「合わなかったら辞めればいい」くらいの気持ちで一歩を踏み出したそうです。
実際に会ってみると木場さんのすごさを肌で感じることができたそうです。
これまでクラシックカクテルしか触れてこなかった上口さんにとって、初めてのミクソロジーの世界、ホテルバーとは異なるお客さまとの活発なコミュニケーション、個性はありつつも「淡い」飲み疲れのない木場さんの作るカクテル、とすぐに木場さんの虜になったと語ります。
木場さんの後に続けと、2024年には20代ながらディアジオワールドクラスの日本ファイナリストにまで残り、まずは憧れたコンペティションで優勝すべく日々邁進しています。
上口さんとノンアルコール

そんなまだ20代の「若者」でもある上口さんとノンアルコールの出会いはホテルのレストラン時代でした。
ランチ時間帯に、プラスアルファで販売できるモクテル(ノンアルコールカクテル)を提案しようという上司からのお達しを受けてスタートしました。
「当時は知識も技術もなかったので、シロップやジュースを使いながら試行錯誤していましたが、日中ということもあり、売れ行きは上々でノンアルコールの需要の高さを感じました。」
バーに異動後も、バーがラウンジとつながっていたということもあり、モクテル需要はかわらず高く、サラトガクーラーやシンデレラのようなクラシックモクテルを販売していたそうです。
夜香木に入ると事情は変わってきます。
ミクソロジーメインのバーということもあり、クラシカルなモクテルだけでなく、相違工夫に富んだモクテルが求められます。
一番の人気はお店の名前を冠した「夜香木」のノンアルコールツイスト。夜にだけ花を咲かせる夜香木という花が由来のこのモクテルは、リンゴ、ジャスミン、蜂蜜のような香りが印象的だと語ります。
「夜香木では、常時4種類のモクテルを用意しておりますが、お酒にあまり強くない方が途中からモクテルを楽しんだり、1軒目でしっかり飲んでこられた方がモクテルからスタートしたり、モクテル原料に興味を持ったお酒好きな方が注文してくださったりと、多様なニーズが存在しています。」
ノンアルコールの未来について

最後に上口さんにノンアルコールの未来についてうかがってみました。
「昨今ではノンアルコールの商材も増えてきて、今後ますます伸びていく分野なのだろうという実感はあります。
ですので、普段お酒を召し上がられないお客さまへのモクテル提案というのはバーテンダーとしても重要になってくるとは思っています。
一方でバーという空間の楽しみ方をいかに知っていただくかも大事なポイントだと考えております。
お客さまもお店もどちらにも無理なく、楽しめるような空間構築ができるように私たちも頑張っていきます。」
いずれは故郷の岐阜でバーをやりたいという上口さんの今後を是非お楽しみに!
Comments